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教育対話主事通信「いろとりどり」2021.10月号

2021.09.27

対話主事通信「いろとりどり」2021.10月月号

 

 小学校1年生の教室から教科書を元気よく読む声が聞こえてきます。「くまさんが、ふくろをみつけました。おや、なにかな。いっぱいはいっている。」…「聞いてよ」と言わんばかりに大きく口を開け表情豊かに読む子どもたちの姿にいつも元気をもらっていました。

 本読みの宿題は、親にとっても少々負担に感じるかもしれません。「子どもが宿題の音読をやりたがらなくて…」という声も聞こえてきます。が、音読はとても大切な学びです。

 子どもたちは、声に出して読むことで日本語のリズムを感じ取り、文章の意味を考えながら読むようになります。声に出して読むためには目と口と耳を総動員します。目で見た文章を脳にインプットしながら、同時に声に出すというアウトプットをし、さらに耳で音声として再認識していくという一連の動きは、脳に実に多くの刺激を与えます。脳がどんどん活性化され、表現力や想像力も育っていきます。黙読では、ちゃんと読んでいるつもりでも実は読み飛ばしていることが結構あります。特に苦手教科だと、気が散って内容が頭に入ってこないこともよくあります。集中して丁寧に正しく音読することで、内容が理解され記憶されていきます。記憶力up、集中力upにもつながります。もちろん、仕方なくいやいややるのでは効果は望めません。どうせやるなら楽しくやりたいですね。

 そこで、国語教育の経験のある知り合いから聞いた「親子音読」のアイデアを三つ紹介します。

 

1 追っかけ音読

 大人が文を少しずつ区切って読み、子どもがそれを追っかけて読みます。ここで大事なのは、述部(どうした、どんなだ)につながっていくまとまりで区切って親が読むことです。そうすることで、正しく意味をつかむことができます。子どもが間違って読んだら正しくまねできるまで同じところを繰り返します。実はこれ、どこで区切るかを考える親の脳トレにもなります。例えば、

 「一ねん二くみの子どもたちがたいそうをしていると、空に、大きなくじらがあらわれました。」

 という文だったら、下のように区切るといいでしょう。①から③までどれも「あらわれました」に続いているので、文の意味がはっきりします。

2 パーフェクトチャレンジ

 「書かれているとおりに文章を読む。まちがえたり、つかえたりしたらアウト。どっちがより長く読めるか?」というルールで親子対抗戦をします。アウトの判定は相互にやるといいでしょう。ここで大事なのは、たとえ物語であってもアナウンサーがニュースを読むように淡々と読むことです。目的は正確に文章を音読することだけなので、そこに全集中。これができて初めて、文章を正しく理解し豊かに読むことのスタート台に立てます。

 

3 ノールックチャレンジ

 いわゆる暗唱。パーフェクトチャレンジに「文章を暗記して」を加えて親子対抗戦をします。詩・短歌・俳句・古文に効果的です。同じ文章をどっちがより早く正確に暗唱できるか? 時間内にどっちがよりたくさん暗唱できるか? などルールはいろいろ考えられます。これも判定は相互にやるといいでしょう。ここで大事なのは、覚える過程でとにかくたくさん音読することです。そのうちに心地よいリズム感をつかんだり、どうしたら覚えられるか自分なりに工夫したりするようになります。

 

 子どもが楽しく正しく音読できるように考えたという「親子読書」、試してみようという気持ちになりましたか? もちろん毎回でなくていいのです。お互いに余裕があるときにゲーム感覚で楽しくやってみたらどうでしょう。

声に出して読むというと、低学年のやることのように思えますが、果たしてそうでしょうか。脳の活性化を促す効果を考えると、高学年でも中学生でもそして大人にとっても大事なことに思えます。以前放映されていたドラマ「ドラゴン桜」でも「言語はとにかく、机にじっと座って黙読というのがいけないのです。体を使って動いて声を出す…これが一番なのです。」というセリフがありました。

ここまで書いてきて、だいぶ前に出版されたある本を思い出しました。「声に出して読みたい日本語」(齋藤孝著)です。買ってはみたものの本棚の片隅に眠っていたこの本を引っ張り出してきました。俳句、物語、詩、百人一首などあらゆるジャンルの、だれもが一度は耳にしたことのあるような文章の一部がとりあげられていました。

私も今日から声に出して好きな文章を読んでみようという気持ちになりました。脳の活性化を目指して!

 

全家研ポピー浜松支部 教育対話主事 鈴木育代

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