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教育対話主事通信「いろとりどり」2023.5月号

2023.04.28

対話主事通信「いろとりどり」2023.5月号

 

今日の話の主人公は、この小鳥!

 シジュウカラです。白いほっぺに黒いネクタイ、頭の上あたりは、青っぽい灰色や黒色。全長13~15センチでスズメくらいの大きさ。虫や木の実や植物の種など何でも食べる雑食性です。平地から山地の林まで日本ではほぼ全国に分布しています。3月下旬ごろからオスが巣を作り、5月ごろメスが10個ほど産卵、12日間ほどで羽化しヒナが生まれます。「ヒーヒー」「ジャージャー」「チリリリリ」「ツピー」「ピーツピ 」「ヂヂヂヂ」など、いろいろな鳴き声があります。

 この「シジュウカラにはいろいろな鳴き声がある」ということに、実は驚愕の事実があったのですが、それを明らかにしたのは動物行動学者の鈴木俊貴さん。2017年に発表した研究結果は、あることを証明して世界を驚かせました。

その内容とは…

「シジュウカラのいろいろな鳴き声にはそれぞれ意味がある。」

「鳥は人間と同じように『言葉』を持っている。」

 びっくりですね。そもそも、どうしてシジュウカラが言葉を話していることに気づいたのでしょう? 鈴木さんはこんな話をしています。

 「森の中の餌台に4、5羽のシジュウカラが群れていて、そのうちの1羽がある時『ヒーヒー ヒーヒー』と聞こえる声を出したのです。そうすると周りのシジュウカラがみんな一斉にやぶに逃げて、その1秒後ぐらいに『ハイタカ』という天敵がサッと餌台にやってきました。もしかしたら、タカが来たことを仲間に知らせているのかなと思って、いろいろ調べるようになりました。森の中にタカの剥製を置いてシジュウカラの行動を観察するなどの実験を重ねて、『ヒーヒー』は『タカ』を意味すると特定しました。」ちなみに「ヘビ」は「ジャージャー」だそうです。

 このような研究を積み重ねた結果、シジュウカラは全部で20以上の単語を操っていることが分かってきました。子育ての場面では、巣箱で子育て中のシジュウカラのメスが「チリリリリ(おなかがすいたよ)」と鳴くと、オスが「ツピー(そばにいるよ)」と答えて食べ物を持ってくるなど、シジュウカラどうしの会話も見られたそうです。

そして、さらに研究を進めると、驚くことにシジュウカラはこの単語を組み合わせて文を作って話すことが分かってきたのです。

 ある時、鈴木さんが森の中にシジュウカラの天敵、モズの剥製を置いてみました。すると、シジュウカラが近づいてきました。そして「ピーツピ ヂヂヂヂ」と鳴きました。その後のシジュウカラたちの行動から、これは「警戒」という意味の「ピーツピ」と、「集まれ」という意味の「ヂヂヂヂ」を組み合わせた「警戒しながら集まれ」という意味ではないかと予想しました。数で対抗してモズを追い払うための号令ではないかと考えたのです。

 では、「ピーツピ」と「ヂヂヂヂ」の順番を逆にすると、どうなるのでしょうか? 録音した音声を逆転させて聞かせてみると、シジュウカラは警戒もほとんどしないし、集まっても来ませんでした。つまり、きちんとした文法のルールを使って会話をしているということになります。このように単語を組み合わせることで、シジュウカラは200パターン以上の文を作ることができるそうです。

 人間以外の動物が文法を使って情報を伝えあっていることを証明したのは、鈴木さんのこの研究が世界で初めてのようですが、最近は、もっといろいろなことが分かってきています。

  • 親鳥がヒナに言葉を教えていること。
  • シジュウカラの言葉が、ほかの動物にも通じていること。(例えば、シジュウカラが「ヒーヒー」つまり「タカだ!」と鳴くと、近くのリスが逃げ出すそうです。生きるために鳥のことばを学習していると考えられるそうです。)

 研究がさらに進めばもっともっと奥深く豊かな鳥の世界がそして動物の世界が見えてくるかもしれません。いずれ動物の会話から、私たち人間にとっても生きるうえで大切なことが分かる日が来るかもしれませんね。

鈴木さんは、こんな話もしています。

「言葉が分かると、彼らが本当にいろいろ豊かな思考の中で試行錯誤しながら生きているということが分かってくるんですよね。そういう世界が、身の回りの自然の中に広がっているんです。そういう世界があるということに気づけるということが大事じゃないかなと思います。」

なお、この鈴木さんの研究成果は、光村図書の中学校国語教科書1年に「『言葉』をもつ鳥、シジュウカラ」として掲載されています。

全家研ポピー浜松支部 教育対話主事 鈴木育代

 

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