対話主事通信「いろとりどり」2022.8月号
夏が来るたび思い出す出来事があります。
平成18年の夏休み、48歳の私は、御嶽山の北隣にある乗鞍岳の頂上に夫と二人で登りました。といっても、登山を趣味にしていたわけではなく、せいぜい高原をトレッキングするぐらいの経験しかありませんでした。
乗鞍岳の高さは3026メートルありますが、実は2700メートルの畳平というところまでバスで行けます。その時も、ほぼ観光気分で、畳平までバスで行ってそこに広がるお花畑を散策しようか程度の軽い気持ちでした。色とりどりに咲き誇る高原植物を楽しんでいると、さらにその上の剣ヶ峰と呼ばれる頂上を目指して続々と人々が登っていくのが見えました。
あと300メートルほどの高さ、1時間半も山道を登れば頂上に着きます。本格登山のいでたちではなかったので少々迷いましたが、3000メートル級の山に登るチャンスはこの先めったにないだろうということで、意を決しました。登山道の先に岩がゴロゴロ積み重なっている風景が見えた時は少々後悔の念が生まれましたが、たった300メートルだし…と気持ちを奮い立たせては、フーフー言いながら登っていきました。
やっと頂上に着いた時の達成感、爽快感は何とも言えないものでした。が、それもつかの間。着いた時は確かに青空だったのですが、山の天気はホントに変わりやすいもの。急に白い霧がモワモワッ、お日様があっという間に隠れ、あれっ雨かな、と思う間もなく、いきなり大粒になってドザーッ、稲光がカッ、雷がバキバキッ、風はビュオーッ。本当にあっという間でした。頂上には小さな神社と小屋があって、小屋の中でおじさんが一人、お守りなどを売っていました。その時頂上にいた20人くらいの人たちは、急いで小屋の中に入れてもらって雨宿り。
雷雲のど真ん中にいるわけですから、雷は自分のすぐ近くで鳴ります。稲妻は小屋の窓のすぐ外を横に走ります。稲妻は空から地上に向かって走るものだと思っていたのですが、山の上では稲妻が横に走ることを知りました。バキバキッ、カッ、メリメリメリッ。「生きて帰れるかな?」と本気で思いました。
ギューギューの状態で立ったまま1時間半。雨も雷も少し弱くなってきたかなと思ったころ、夫が小屋のおじさんに尋ねました。
「そろそろ下りても大丈夫ですかねえ?」
おじさんは、一瞬私たちの顔を見つめ、そして、ゆっくり答えました。
「わたしは、今下りろとも、今下りるなとも、決して言いません。自分の判断で行動してもらいます。」
ええーっ、そんなあ! 冷たいなあ。……… 正直そう思いました。
絶対、私たち素人より正しい判断ができるはず。何よりもこの山のことをよく知っているはずだし…。
でも、それ以降ただ黙って座っているおじさんにそんな文句を言えるはずもなく、夫と顔を見合わせながら、空が少しでも静かになるのをじっと待つだけの時間が過ぎていきました。帰りのバスの時刻も気になるので、まわりの人たちの様子をうかがって下りるタイミングをさぐりながら…。
結局、雷雨が多少弱くなったかなというタイミングで思い切って決断し、避難していた人たちの中で一番最初に小屋を出て下山することにしました。下山途中も、年季の入ったトレッキングシューズの底が抜けるというアクシデントに見舞われるなど、いくつかのアクシデントがありましたが、何とか下山できました。「自分の判断で行動する覚悟や自己責任の大切さ」を教えてくれた、忘れることのできないおじさんのひと言でした。
夏が来るたび、遠くの高い山々を目にするたびに、鮮やかによみがえってくるほろ苦い出来事です。でもまた3000メートル級の山々のてっぺんに立ってみたいなという思いはどこかに残っています。気象知識や山の知識、経験を積むなどしっかり準備をして…。
全家研ポピー浜松支部 教育対話主事 鈴木育代
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