教育対話主事通信 12月号
今年の夏、人生はじめての出会いがありました。右の写真の花です。
夏の夜、よい香りを放ちながら妖艶な雰囲気を漂わせて咲く白い花。
花びらから四方八方に伸びるレース糸に自分が絡め取られてしまいそうな幻想さえ覚えます。夜しか咲かず、夕方6時ごろからつぼみが
開き始めて真夜中に全開、2~3時間でしぼんでしまいます。
この不思議な花の正体は?
カラスウリです。
夏の終わりに、濃淡の緑の縦じまが美しい実をつけ、やがて秋の深まりとともに真っ赤に色づきます。
枯れた野山で裸木に真っ赤な実がぶら下がっている冬の風景を思い出す方もいるのではないでしょうか。
はて? 夜に花を咲かせても飛んでくる虫はいるのかな? 受粉はできるのかな? と不思議に思って調べてみました。
どうやら夜遊び好きな蛾、スズメガを誘っているようです。白く目立つ花と甘い香りでおびき寄せて受粉を促す生存戦略なんですね。
(たまにEテレで放送される「植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之」は一見の価値あり。)
佐鳴湖散歩をするようになり、道端の雑草としか見えていなかった草花にも様々な種類があり、花も葉っぱも咲き方も咲く時期も実のつけ方も様々、一つ一つに個性や特色があることに気付きました。
「雑草」などと一括りにしてはいけない、草花も必死に生きているんだと感じずにはいられません。
もっともっと植物の不思議な世界をのぞいてみたいという思いにも駆られるようになりました。
動物と同様、植物にとっても未来に子孫を残すことは生き物としての重要なミッション。植物が子孫を残すために必要なのは、まず「受粉」。
今回は、自ら動くことのできない植物がどんな工夫で受粉しているか、まとめてみました。
① 動物媒花:動物に花粉を運んでもらう花。花粉を運んでもらう動物への報酬として、花の蜜というご褒美をあげます。
持ちつ持たれつの関係です。どんな動物が運ぶかによってさらに細かく分けることができます。
・虫媒花 カラスウリのように昆虫に花粉を運んでもらいます。きれいで目立つ花びらで蜂や蝶やアブやアリなどの虫を誘います。
多くの草花がこの方法で受粉しています。
メジロ
・鳥媒花 鳥に花粉を運んでもらいます。運び屋の鳥の代表がメジロ。メジロは花の蜜をなめるのに適した筆のような舌をもっていて梅や桜の花の蜜が大好きです。
サザンカやツバキなどは、虫が少なくなる寒い時期に赤など目立つ色の花を咲かせ、たっぷりの蜜を用意して、メジロやヒヨドリなどの鳥がくるのを待っているようです。
クヌギの花
② 風媒花:風に花粉を運んでもらう花。最も知名度(悪名?)が高いのは「杉」か…ふんっ! ヒノキやイネ科の植物、クヌギなどがこの方法。
③ 水媒花:水の流れに花粉を運んでもらう花。クロモやマツモなど水辺で咲く花たちです。水中で受粉するものと、水面で受粉するものがあるようです。
④ 同花受粉:自分自身で受粉する花。自分自身で受粉してしまいます。アメリカフウロはその一種で、雄しべが雌しべの柱頭に接しています。
受粉一つとっても実に様々な方法があるんですね。特定の虫だけに来てもらえるよう特徴的な構造をもった花をもつ植物もあり、
植物の生存戦略は実に多種多彩で奥深い。
どうやってこんな知恵を身につけてきたのかと感心することばかりです。
また、わずかなコンクリートの割れ目から生えているもの、抜かれても抜かれてもまた生えてくるもの、踏まれても踏まれても起き上がるものなど、生命力のたくましさにも圧倒されます。
最近の研究では、「植物は会話ができる」とも言われているようです。葉っぱを虫に食べられた植物が空気中に化学物質を放出して
「食べられているよ、助けて!」と「葉っぱを食べる虫」を食べる他の虫に来てもらったり、「あぶないぞ!」とのろしを上げるように周囲の仲間の植物に危険を知らせたりするようです。
さらに、根から土壌に化学物質を分泌して「ここは私の土地だから近くに来ないでね」と他の植物に自分の縄張りを主張するものもいるとか。
確かに、縄張りを確保すれば日光や土壌の栄養などを十分に取ることができますよね。「本当?」と思ってしまうことばかりですが実に面白い。
研究が進めば植物の不思議な世界がもっと見えてきそうです。
全家研ポピー浜松支部 教育対話主事 鈴木育代
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